このメールをもらって、官邸の参与にメールを転送し、直接目を通して、現状を伝えて
ほしいといつものように話しました。彼は「こういう話は次々、ぼくのところにも来てい
るのですよ。なんとかしたいけど、まったくここは動かない。菅は決めないよ」と嘆き節
ばかり返ってきます。
そして、小野沢先生とも話しました。
石巻の湊地区にいます。木下さん。避難所は学校が始まりだすこともあって、教室
で閉鎖が始まっているのですよ。そしたら、体育館しか使えない。体育館は寒いんで
すよ。疲れる。市内から650人があぶれていて、かなり狭いんです。避難民のうち、
特に高齢者は限界に達していて、ノロウイルスの蔓延は防ぎようがない感じがします
特に体育館はさっと広がる。お年寄りや幼い子どもからやられていく。防ぎようが無
いんです。そんなレベルで蔓延すると一つの体育館で一人が死ぬようなこともおきる
んです。教室なら数人規模ですから、まず蔓延はとまるけれど、体育館は一人患者が
出ると防ぎようがないのです。皆さん、体力が落ちているんです。メールで書いた人は
脳出血で亡くなったと思います。
こういう言い方をすると大変失礼にあたるかもしれませんが、尋常な状態で皆さんな
いんです。極端に言うと、地下街の浮浪者にだんだん近づいてきている感じです。避難
所は、石巻において、特に湊地区は最もひどくなりつつあります。ゴーストタウンのよう
な感じです。屋根上に大きな駐車場があるスーパー、エレベータホールに二十人の方が
住んでいるままで、仮設トイレを設置はしているんですが。ところが、ちょっとはなれたと
ころでは被災していないエリアもある、普通にホテルは営業しているんですよ。ちょっと行
くと普通なんです。二、三日交代でくる公的な機関の支援者が借り上げていてそういうと
ころに泊まっているんですよ。なんで被災者が体育館に寝て、公的な人達がホテルに寝
るのか理解できません。こういうホテルや遠隔地のホテルを国が借り上げて、被災者を
泊まらせたほうが話が早いんです。
こういう場所から思い切って全面的に離れたほうがよいとは思いますよ。でもなかなか
離れたがらない。居たいんです。その理由は、家のかたづけと頻発している物取りの対
策なんです。それでも遠隔地のホテルから週二回でも現地にいけるなら、本当はさらな
る避難を承諾すると思います。最初はこの地を離れないといっていたんですが、一ヶ月
たってずいぶん変わってきました。国がホテルの予約を全部借り上げて、徹底してやれ
ばいいんです。ハッキリ言って今も非常事態は継続したままなんです。私有財産権も一
部制限をかけるしか現地では方法はありませんよ。なんで東日本壊滅と総理自らが言
い出した癖に、今、非常事態宣言もしない感覚が理解できません。
ここにいて、原発のことも凄く気になっているんです。僕は今回、すこし遠隔地に避難
させるスキームをやろうとして東北にいますが、その点から考えても、原発もシリアスな
状況です。僕らは、もともと千葉の鴨川ですが、福島第一原発の不測の事態を考えると
、関係者の子どもたちなどを西日本に避難させられる様に拠点の準備だけは既にして
います。当然だと思います。さらにこの状況で浜岡原発を止めないと、万が一、何が起
きてもおかしくないんです。あの立地はさらにシビアです。今、こんなことが続いているの
は本当に理解できません。
僕の見ているところでは、ウンチを紙で丸めて捨てている人がいる、なのに近くの温泉
旅館では普通に宴会をしていてるんです。温泉旅館には被災者が行くべきなのに。日本
の社会はなんなんだろうと思いますよ。民主党を応援していたけど、もうこんなことを一ヶ
月近くも放置しているのを見ていて、ほんとに耐えられないんですよ。避難所を体育館で
もきちんとした設備のある地域まで移動させる、人々を強制的に安全な場所へ移す。
「バスで送ってください。もう一ヶ月も経っているんですよ。」と。さっきの余震もかなりゆ
れました。まさに現地は”DAY AFTER TOMORROW”の世界です。阪神大震災は
木下さんは現地に行かれたならわかりますよね、あの時はボランティアがかなりいまし
たよ。緊張していたけど、人間が信じられた。今回もいるんだけど、エリアが広すぎて、
目立たない。分散しているからかもしれないけど。だから、荒涼とした空間に、悲惨な状
態が続いているんですよ。映画でしか見たことのないような世界が広がっていて、漠た
る不安が収まらないんです。避難ということが津波の被災地でもきちんといまだに行わ
れていないのです。さらに原発もおさまらない。これが現状なんです。
小野沢先生は遠隔地避難や避難拠点の構築という観点もお持ちの医師で、こうした
津波の悲惨な現場でぎりぎりの活動を続けている方です。避難という観点から見た場
合、今の政権が、津波の避難所の構築も機能していないという認識を聞くと、原発も含
めたトータルとしての避難という考えに到底たどりつかないだろうという現実をさらに思
い知らされます。津波による恐怖が続いていることと、原発震災の恐怖も、その原因の
みならず、対応についても全く同じ感覚があるのだということを思い知らされました。本
当に恐ろしい話です。
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